この記事は電力自由化開始直後に書いたものです。現在は新電力もかなり普及していてお得なプランもたくさん出ていますので、まだ電力自由化で契約を見直していない方はすぐに見直した方がいいと思います!
最近ニュースでもよく聞くようになった電力自由化。自由化に向けて各企業も広報に力を入れ始めました。
電気料金が安くなると聞いて乗り換えを検討されている方も多いのではないでしょうか?
でも、ちょっと待ってください。
電力自由化って何なのか?どの会社から買えば本当にお得になるのか?それを見極めるのはまだまだ早いです。
私の本業はマンションの電気設備の設計や管理です。電力会社とやり取りすることも多く、電力自由化についてはすでに数年前から情報収集を行っています。
でも、電力会社の乗り換えはまだまだ判断できる段階にないと考えています。
今日は電力自由化での乗り換えはまだまだ様子見が良いよという話です。
ちなみに、私は関東に住んでいますので主に東京電力管内の情報を元に話をしていますが、他の地域でも情勢はほぼほぼ同じであると思います。
電力自由化、電力会社乗り換えで電気料金が安くなる!電力会社を比較して電力会社を乗り換えよう! – 物欲に負けた日
※電力自由化も本格化し、プランも出揃ったので新たに記事を書きました。
電力自由化でENEOSでんき(エネオス)に乗り換えて1年!何にもしなくても電気料金が約6,000円も削減できました – 物欲に負けた日
ENEOSでんきに乗り換えてとってもお得だったので紹介です!
電力自由化で何が変わるのか?
そもそも電力自由化で何が変わるのでしょうか?
家庭向け電力が自由化されると電気を大手電力会社以外からも買えるようになります。
仕組みを詳しく説明すると長くなるので今回は簡単にだけ説明します。
今までは電気を「作る→送る→売る」という一連の作業をすべて地域電力会社と言われる電力会社が行っていました。
今後はこれらが分業化され作る会社・送る会社・売る会社が別れることになります。
そして、私たちは電気を売る会社(小売電気事業者)を自由に選択できるようになります。
電気料金のプランも自由化されるので特色あるプランが多数出てくることが予想されます。
これで競争が進み、今までより安くお得に電気が使えるようになるというのが一般的な説明でしょうか。
もちろん自由競争なので結果はわかりません。海外では自由化によりかえって電気料金が上がってしまったケースもあります。
いずれにしても私たち個人はたくさんある小売電気事業者・料金プランから自分にあった会社・プランを選んでいかなければ損をしてしまうということです。
乗り換えを検討するには時期が早い
ちゃんと選ばないと損をするとはいえ、現状はまだまだ乗り換え先を決めるには時期が早過ぎると考えています。
実際に切り替わるのは2016年4月以降
1月から各小売電気事業者は契約申込の受付をできるようになりました。しかし、実際に切り替わるのはもっとも早くて4月1日以降です。
これは国の制度上の決まりなのでどの会社に申し込んでも変わりません。
なので、慌てて申し込みをしても仕方がないというのがまずあります。
もちろん申し込みが殺到すれば切り替えに必要な作業が遅れ損をしてしまう可能性はあります。
しかし、それは数日から長くても1ヶ月程度の話でしょうし、恐らく3月初旬の申し込みでも4月1日の切り替えに間に合うのではないかと思っています。
それよりもすぐに乗り換えを決めて申し込みを行う方が損をしてしまう可能性が高いです。
出揃わない各社の料金プラン
1月に入り小売電気事業者の申し込み受付が解禁されましたが、実際にはまだまだ各社の料金プランが出揃っていないのが現状です。
例えば東京電力のライバルとして有力だと思われる東京ガスは昨年からいち早くテレビCMなどの広報を開始し、料金プランの発表もすでに行っていますが、これに対抗し東京電力が料金プランを公開したのは1月7日です。
つまりこの記事を書いている前日です。
各小売電気事業者はライバルとなり得る他の小売電気事業者の出方や料金プランの相場を伺っているわけですね。
まだ詳細がわからない小売電気事業者も多いですし、すでにプランを公開している小売電気事業者でも今後も新たな料金プランが出る可能性もあります。
契約期間の縛りがあることも
どこと契約しても自由とはいってもせっかくの契約者がすぐに解約しては小売電気事業者は赤字になってしまいます。ですから契約後は一定期間解約できない契約になっている小売電気事業者も多くなっています。携帯電話の2年縛りのようなものです。
こうした状況では焦って小売電気事業者を決めてしまうと今後乗り換えができずかえって損をしてしまうかもしれません。
小売電気事業者を選ぶために考えなければいけないこと
電力自由化で様々な料金プランが生まれ、プランの比較や選択が複雑になることが予測されます。その複雑さは電気料金だけにとどまらず非常に複雑怪奇なことになってくると予想しています。
拡大するセット割やポイント還元
小売電気事業者を選ぶ時に、単に電気料金の単価だけを比較すれば良いのであれば困ることはありません。
しかし、実際にはそうもいきません。
多くの小売電気事業者は携帯電話やインターネット、ガスなど他のインフラとセットで割引を行うプランを打ち出しています。顧客を囲い込むという意味では当然の戦略ですが、利用者からすれぱ単純比較が難しくなってしまいます。
セット割の詳細はいまいちわかりづらいものが多く、現状より安くなるかすらわからないように思えます。
また、現金での値引きでなく、ポイントで還元する小売電気事業者も多くいます。これもポイントを何に使えるのか?ポイントの有効期限はどれくらいか?などを考えないといまいち意味のないものになってしまうと思われます。
自由化が進むのは電力だけではない
今自由化は生活に関わるインフラ、ライフライン全般で進んでいます。今回は電力自由化を主に取り上げていますが、携帯電話、インターネット、都市ガスもどんどん自由化されます。
携帯電話は、最近では格安SIMなどと呼ばれるものが出回っていて、シェアを伸ばしています。私も格安SIMを使っています。
インターネットでは、光回線はNTTの独壇場でしたが、昨年から光の卸販売が開始され、小売市場が自由化されました。
また、都市ガスも送る・売るの分離が決まっていて、電力と同じように自由化されます。
このように、今まで一部の大企業が独占していたインフラ関係の市場でどんどん自由化が進んているのです。その中でそれぞれのインフラをセットにして割引くということが行われるため、セット割の詳細は非常に複雑になってしまうのです。
それぞれのインフラの自由化による激変がある程度収まらないと本当に何がお得なのかは判断しようがない状況になっています。
割引は結局スケールメリット
電力自由化を前に複数の小売電気事業者がプランを公開し、すでに申し込みの受付も始まっています。
そうしたすでに公開されているプランで試算してみたのですが、新たに発表されたプランはどれも「たくさん電気を使う家庭は得だけど、あまり使わない家庭は損」という結果でした。これについてはいずれ別の記事で書くかもしれませんが、とりあえず簡単に言うと月10.000円程度かそれ以下ではほとんどメリットはありませんでした。
結局自由化による割引はスケールメリットということです。たくさん使ってたくさん払ってくれる人は、その分利益もたくさん上がります。だから多少還元しても大丈夫ということです。
今までは電気料金は公共料金で公平性や社会福祉の観点から料金体制が決められていましたが、自由化はそうした公共性とは大きく反します。結局大口の顧客を優遇する流れになってきています。
電力自由化の恩恵を受けるにはたくさん使うかセット割が必須になってくると思います。
電力の完全自由化は始まったばかり
なんだか電力自由化のデメリットを書き立てる記事になってしまいましたが、私個人は自由化には賛成です。自由競争は資本主義の基本です。電気料金もおそらく安くなると考えています。
ただ今は非常に情報が混乱している時期であり、今後の予測も難しい中で長期の契約期間がある小売電気事業者との契約は待ったほうが良いということ。各種インフラの自由化がどんどん進んでいく中でトータルで安くするというとを考えないと結局損をしてしまうということを言いたかったのです。
乗り換えの検討はもうちょっと待ってみたほうがよいと思いますよ。